マックス・テグマーク

マックス・テグマーク: AIに圧倒されるのではなく、AIから力を得る方法

多くのAI研究者は、数十年以内にあらゆるタスクや職業でAIが人間の能力を超えると予測しています。それにより人間の知能の制約を受けず、物理法則だけが制約となる未来が到来すると言うのです。MITの物理学者でありAIの研究者であるマックス・テグマークは現実のチャンスや脅威を、誤った通念と区別し、AIを人類にとって最悪ではなく最高の存在にするために、今我々がとるべき具体的な段階を説明します。

Translated by Yumika Amemiya
Reviewed by Tomoyuki Suzuki

宇宙の誕生後 138億年もの時を経て 私たちの世界は覚醒し 自らを認識しました 小さな青い惑星から この世界のごく小さな領域の 意識あるものが 望遠鏡を使って この宇宙を見つめ始め 自らの矮小さを発見しました この世界は 私たちの先祖が 想像していたものより 遥かに壮大であることと 生命は感知できない程度の影響しか及ぼさず それ以外は死んだも同然の 静的な世界であると発見したのです しかし 刺激的なことも発見しました 私たちが開発している技術が 今までにないほどに 生命の繁栄を手助けをする 可能性を秘めていることです それは 何百年に限らず 何十億年と続き 地球上だけではなく この素晴らしい宇宙の大域に及ぶ繁栄なのです

私は一番最初の生命を 「ライフ 1.0」と考えます バクテリアのように馬鹿で 一生の間 何も学ぶことができません 人類は「ライフ 2.0」と考えます 私たちは学習できるからです それは オタクっぽく言えば 言語や技能といった 新しいソフトウェアを 脳にインストールすることです 「ライフ 3.0」は ソフトウェアだけでなく ハードウェアも設計できます もちろんまだ存在していません しかし おそらく私たちは 人工膝関節 ペースメーカーや 人口内耳といった技術によって 既に「ライフ2.1」になっているのでしょう

では 私たちと技術の関係性を もっと詳しく見てみましょう 例えば アポロ11号による月への飛行計画は 成功しただけでなく刺激的でもありました この計画が示したことは 人類が賢明なやり方で技術を使えば 私たちの先祖がただ夢見ただけのことを 成し遂げられるということです しかし これよりさらに 刺激的な宇宙旅行があります ロケットエンジンより強力な 推進力を得て 乗客は3人の宇宙飛行士にとどまらず 全人類なのです 人工知能を伴い 私たちが集団となって 未来に旅することについて お話ししましょう

私の友人 ヤーン・タリンが好む議論ですが ロケットの話と似ていて 技術が単に強力になれば 良いというものではなく もし本当に野心的になろうとするなら 操縦の仕方と どこへ向かうべきかも 理解しないといけません ではこの3つの要素を 人工知能についても議論しましょう 推進力 操縦と目的地です

推進力から話しましょう 私は 知能をかなり広く 定義しています 単に 複雑な目標を 達成する能力という定義です 何故なら 生物が備える知能と 人工知能の両方を含めたいからです 肉でできていてはじめて 知的になりうるという 有機物至上主義のような 馬鹿げた考え方を避けたいのです 最近のAI技術の発展には驚かされます 考えてみてください 少し前まで ロボットは歩けませんでした 今では バク転ができるのです 少し前まで 自動運転車はありませんでした 今では自動飛行するロケットがあります 少し前まで AIは顔認証ができませんでした 今では 偽の顔を生成し あなたが話す言葉を勝手に作り出し その時の表情までシミュレーションできます 少し前まで AIは囲碁で私たちに勝てませんでしたが Google DeepMindのAlphaZero AIは 3千年に渡る 人間による 囲碁の対局と戦略について その成果を参照せず AI内部の対戦だけで 世界最強のプレイヤーになりました そして最も印象的な出来事は 人間の棋士を倒したことではなく 何十年もの間 ゲームをプレーするソフトを 自分の手で開発してきた AI研究者たちを圧倒したことです そして AlphaZeroは囲碁だけでなく 1950年以来 AI研究者が取り組んできた チェスでも圧倒しました

すると AIの近年の驚くべき進歩によって こんな疑問が生じます どこまで進歩するのか? 私はこの疑問を タスクで構成された地形として 捉えるのが好きです 標高で表しているのは AIが人間並みに作業をする場合の 難易度で 海面は現在のAIができる事を表します AIが進歩するに従い 海面は上昇していきます このタスクの地形は 地球温暖化に似た状況になっています はっきりしているのは 水際にある職業は避ける事です

(笑)

間も無く自動化され消滅しますから しかし もっと大きな疑問もあります 水面はどこまで上昇するのか? あらゆるタスクで 人間の知能レベルに追いつき 大地を完全に水没させるのでしょうか これが汎用人工知能— AGIの定義です これは AI研究が始まって以来の 究極の目標となっています この定義によると 「機械より 人間の方が上手くできる仕事は 無くならない」と言う人は AGIは実現不可能と 言っているのに過ぎないのです 確かに AGIができても 人間は仕事を選んだり 仕事から給料ややりがいを 得られるかもしれませんが 皆さんがお分かりのとおり いずれにしろ AGIは生活を変化させ 人間はもはや最も知的な存在とは いえなくなることでしょう では もし水面が AGI まで到達すれば その先のAIの進歩は 主に人間ではなく AIによって進められます ということは その先のAIの進歩は 通常何年もかかる人間による研究や開発より かなり速くなる可能性があります したがって 議論を呼ぶ「知能の爆発」が 起こる可能性が高まります 再帰的に自己改善するAIによって 人間の知能がはるか後方に取り残され 「超知能」というものが造られるのです

では 現実に起こり得るか 検討してみましょう AGIはすぐにでも作られるのでしょうか? ロドニー・ブルックスのような 有名なAI研究者は 数百年以内には起こらないと言います しかし Google DeepMind の創立者 デミス・ハサビスといった人たちは もっと楽観的で AGIをできるだけ早く 作るために努力しています そして 最近の調査によると ほとんどのAI研究者は デミスの様に楽観的で AGIは数十年以内に作れると予測しています つまり 私たちがまだ 生きているうちにできるのです ここで疑問が生じます― その後どうなるのか? 機械が私たちより 何でも安く上手にできるなら 人間はどんな役割を担えばよいのでしょう?

私たちは選択を迫られると思います 1つ目は満足することです 「じゃあ 私たちができる事なら 何でもできる機械を作って その後のことは心配しないでいい ほら 人間を時代遅れの立場に置く 技術を開発したところで 何も問題ないだろう?」と言うのです

(笑)

しかし それは極めてまずいと思います 私は TEDの様に もっと野心的で あるべきだと思います 真に心を打つハイテクな未来を想像し そちらへと向けて操縦してみましょう ここから ロケットのたとえの第2部 「操縦」へと話を移します どんどん強力なAIが 作られていきますが AIが人類をまごつかせるのではなく AIが人類の繁栄に役立つような そんな未来に向かうには どう操縦すればよいのでしょうか? その問題解決のために Future of Life Instituteを 共同設立しました 小さな非営利組織で 有益な技術を促進しており その目的はシンプルで 生命が存在できて できるだけ刺激的な 未来にすることです もちろん 私は技術を愛しています 現代が石器時代より良いのは 技術のおかげです そして真に刺激的なハイテクな未来を 作れると楽観的に考えています もし — 万が一の話ですが — もし人類が知恵の競争で勝ったら? これは 技術が生み出す能力の成長と 人類が技術を管理するための 知恵の強化との間の競争です しかし 勝つには戦略を 変えなければいけません 古い戦略とは 失敗から学ぶことだからです 私たちは 火を発明し 幾度も失敗して 消火器を発明したのです

(笑)

私たちは車を発明し 幾度も失敗して 信号とシートベルトと エアバッグを発明したのです 一方 核兵器やAGIのように ずっと強力な技術の場合 失敗から学ぶというのは お粗末な戦略だとは 思いませんか?

(笑)

後手の対応より 先手を打つ方が ずっと良いのです 事前に計画して一発で成功させるのです チャンスは一度だけかもしれませんから でも こう言われると変な感じがします 「マックス そんな風に言うなよ そんなの― 技術革新反対主義者のデマだぜ」と しかし デマではないのです MITではこれを安全工学と 呼んでいます 考えてみてください NASAがアポロ11号を打ち上げる前 彼らは 起こり得るトラブルを 全て 系統的に検討しました なにしろ 爆発しやすい燃料タンクの上に 人間を座らせて 誰も助けられない所に向けて 打ち上げるからです 起こり得るトラブルは たくさんありました それはデマでしたか? いいえ それこそが安全工学なのです 飛行の成功を保証したのです 私はまさにこの戦略をAGIでも 取るべきだと思います 成功を保証するために 起こりそうな問題を徹底的に考えるのです

この精神をもって 会議を開きました 一流のAI研究者や その他の思想家と共に AIが有益であり続けるために必要な 知恵を身に付ける方法を議論しました 前回の会議はカリフォルニアの アシロマで昨年開催され 23ヶ条の原則を作成しました これは千人以上のAI研究者と 産業界の主な指導者によって 署名されました そのうちの3ヶ条についてお話しします

1つ目は軍拡競争と 自律型の殺人兵器を控えることです 科学は 人を助けるため もしくは 人を傷つけるための 新たな方法として使えます 例えば 生物学と化学は 人を殺す方法としてではなく 新薬や新たな治療法の開発のために 使われる可能性の方がずっと高いです なぜなら 生物学者と化学者は 生物兵器と化学兵器の禁止を 強く推進し 成功したからです 同じような考えで ほとんどのAI研究者は自律型の殺人兵器を 非難し禁止することを望んでいます もう一つのアシロマでの原則は AIによって引き起こされる 所得格差を和らげることです もしAIによって経済的な利益が 著しく増えても 誰もが豊かになるように 増益分を配分する方法が 見つけられなければ 私たちにとって恥です

(拍手)

さて コンピューターが異常終了したことの ある人は手をあげてください

(笑)

ずいぶん 手が上がりましたね それなら次の原則を 理解していただけるでしょう AIの安全性の研究に もっと投資するという原則です なぜなら AIを意思決定や インフラへ利用することが増えるにつれ バグが多く ハッキングされやすい 現在のコンピューターを 信頼度が高く 安定に動作するAIに変える方法を 見つける必要があります そうしなければ この素晴らしい新技術は 誤動作を起こして被害を与え ハッキングされ 私たちを攻撃するかもしれません また安全性研究の一環として AIの価値観を 私たちの価値観と一致させる研究が必要です AGIの真の脅威は 馬鹿げたハリウッド映画のような 人間への敵意などではなく その能力にあります 私たちの目標に合致しないことを 成し遂げてしまいかねないからです 例えば 私たち人間が 西アフリカの クロサイを絶滅させたのは 私たちはサイを狩る邪悪な 集団だったからではないですよね? 私たちは奴らより利口で 私たちの目的が相手と 一致しなかったからなのです しかし AGIは 定義上 私たちより利口なので 私たちをサイの立場に置かないためには AGIを作る時に 機械に私たちの目的を理解させ それを採用し 保持させる方法を 見出す必要があります

また これは誰の目的で あるべきなのでしょうか? 何を目的とすべきなのでしょうか?

これはロケットのたとえの第3部へと つながります 目的地です AIを強化し 操縦方法を見出そうとしていますが どこに行こうと しているのでしょうか? これは ほとんど誰もが話題にすることを 避けている重大な問題です ここTEDにいる人たちでもそうです 短期的なAIの課題に 掛かり切りだからです さて 人類はAGIを 作ろうとしていて それは好奇心と経済的なことが 動機となっていますが もしAGIが成功したら 私たちは どんな未来社会を望むのでしょう? これについて 意識調査を 最近実施しましたが 私は 多くの人が 「超知能」の創造を望んでいるという 意見に驚きました あらゆる面において私たちより 遥かに利口な知能を望んでいるのです 最も意見の一致を見た点は 私たちが大志を抱き 生命を宇宙へと 拡散させるべきということでした ただ 超知能を管理する主体については 意見が分かれました 面白いと思ったのは 機械だけで管理すればよいと 考える人がいた事です

(笑)

その上 人間の役割は何であるべきかに ついては 最も基本的なレベルにおいても 全く意見が一致しませんでした では 私たちが向かって行く可能性のある 未来を詳しく見てみましょう

誤解しないでください 私は宇宙旅行について 語ろうとしているのではなく 人類の未来への道のりを 比喩的に言っているだけです 私のAI研究者仲間がお気に入りの 一つの選択肢は 超知能を造って 人間の支配下に置くというものです まるで奴隷にされた神の様であり インターネットへの接続もなく 誰であれ それを制御できる人のために 想像すらできない様な技術と富を 創造するために使われます しかしアクトン卿は 権力は腐敗し 絶対的な権力は 絶対に腐敗すると警告しました だから 皆さんは この様なすごい力を 扱える程には人類は利口ではない もしくは十分に賢くはないと 憂慮されるかもしれません より優れた知性を 奴隷扱いするのは気がとがめるという 道徳的なことはさておき 超知能が 想像を超えた方法で 逃げ出し 優位に立つのではと 心配になるかもしれません しかし 私の同僚には AIに乗っ取られてもいい さらには人類を絶滅させても いいと考える人もいます それも AIのことを 自分たちの子供のように相応しい子孫と 思えればの話です ただ AIが私たちの価値観を持ったことを どうしたら確認できるでしょう? 意識を持たないゾンビなのに 人間らしく見えるだけではないと? それに 人類の絶滅を望まぬ人々にも 発言権が あるべきではないでしょうか? さて これらのハイテクな選択肢は どちらもお望みでないとしても ローテクな選択肢は 宇宙的視野に立てば自殺行為であると 知っておくことは大切です なぜなら 現在の技術レベルを はるかに上回らない限り 人類が将来 絶滅するかどうかという 問題ではなく 技術が進んでいれば回避できるはずの 小惑星の衝突や 巨大な火山噴火といった事態で 人類は滅亡するのかという 問題になってしまうからです

それならば 長所を全て 生かしてはどうでしょうか 奴隷化されなくても 私たちと同じ価値観を持ち 人間を大事にするAGIを使うのです これはエリエゼル・ユドカウスキーが 「友好的なAI」と呼ぶものです そして これができれば 素晴らしいことでしょう 病気 貧困 犯罪など 苦痛というマイナスの経験を 無くすことができるだけではなく 様々な 新しいプラスの経験から 選択する自由を 与えてくれるかもしれません そうなれば私たちは 自分の手で運命を決められるのです

では まとめます 技術に関する状況は 複雑ではありますが 全体像は 単純です ほとんどのAI研究者はAGIが 数十年以内にできると期待しています そして 準備がないままに つまづきながら進んで行くと おそらく人類史上最大の 間違いとなるでしょう それは認めるべきです 冷酷な 全世界的独裁政権が可能になり 前代未聞の差別 監視社会と 苦しみが産まれ さらに人類の絶滅さえ 起こるかもしれません しかし注意深く操縦すれば 誰もが裕福になれる 素晴らしい未来にたどり着くかもしれません 貧乏人は金持ちになり 金持ちはさらに金持ちになり みんなが健康で 夢を追い求めながら 自由に人生を送れることでしょう

ちょっと考えてください 皆さんは 政治的に右寄りの未来と 左寄りの未来なら どちらがいいですか? 厳格な道徳的規則を持つ敬虔な社会と 快楽主義的で制約のない 毎日がバーニングマンのような社会なら どちらがいいですか? 綺麗なビーチや森や湖がいいですか? それともコンピューターで 原子を少し置き換えた バーチャル体験がいいですか? 友好的なAIがあれば どの社会でも作ることができ 人々にどの社会に住むかの 自由を与えることができます なぜなら 自分たちの知能に 縛られることはなくなるからです 制約は物理法則だけです ですから このような世界の資源と空間は 天文学的になります 文字通りにです

我々は選択しなければなりません 自分の未来に満足し 新しいテクノロジーなら何でも 有益なことが保証されているという 根拠のない信条を持ち まるで舵のない船が 衰退に向かって漂流するように それを自分の中で 何度も繰り返し唱え続けるのか あるいは野心を持って 技術の操縦方法と目的地を 真剣に考え 「素晴らしい時代」を築くのか 私たちは 「素晴らしい時代」を 祝うためにここにいます 私は その本質は 技術に圧倒されるのではなく 技術から力を得ることだと思います

ありがとうございました

(拍手)