エミリー・ナゴスキ

エミリー・ナゴスキ: 不随意の性的興奮についての真実

性教育者のエミリー・ナゴスキが、セックスに関する最も危険な通説の1つについて解説し、「興奮の不一致」の裏側にある科学的要因を教えてくれます。「興奮の不一致」とは、身体反応と快感や欲求との間に断絶がある場合のことを言います。こうした親密かつ個人的な事柄は、居心地が悪く話しにくいことかもしれません。しかし、この率直なトークを通じてナゴスキは、この非常に重要な情報を判事、弁護士、パートナー、子供たちなどに伝えるようにと強く促します。「勇気を持って対話を持つたびに、この世界をほんの少し住みやすい場所にすることができるのです」と、ナゴスキは言います。(このトークには成人向けの内容が含まれています)

Translated by Moe Shoji
Reviewed by Misato Noto

[このトークには成人向けの内容が含まれます 各自の判断で視聴してください]

性教育者として 私が得意とするのは 話題に科学を持ち込むことです ですが 最も重要なのは セックスに関する話をするときには 偏りのない態度を取ることです 面食らったり むずがったり 批判をしたり 恥ずかしがったりしません どんな場所でもです どんな質問をされたとしてもです あるときは 学会の後 ホテルのロビーで ちょうど帰ろうとしたところで 同僚が追いかけてきました 「エミリー すぐ済むから質問させて 私の友達の話だけど―

(笑)

バイブレーター中毒に なることってあるのかな?」 答えはノーですが 慣れてしまうことはあるでしょう 熱帯のリゾートで行われた 別の学会では 朝食のブッフェで カップルが近づいてきました 「エミリー 突然ごめんなさい ちょっと聞きたいことがあるんです 早漏についてなんですけど」 「ええ ストップ・スタート法を お教えしますね」 これは日常茶飯事です

他の人がギョッとするような場合でも 私は偏りのない態度でいます 「ギョッとする」というのは 驚きに恥ずかしさと 嫌悪の感情が混じった感情で 手をどうしたらいいか わからなくなるような気持ちです 理由もあります この感情を経験する理由は 人生の最初の20年間で セックスというのは 危険なもので 消えることのない恥の元凶であり ものすごく上手くなければ 誰にも愛されないとすり込まれるからです

(笑)

ですから 他人だらけの空間で セックスに関する話を聞くと ギョッとするかもしれませんが それは普通です 深呼吸しましょうか 感情はトンネルのようなものです 暗闇を抜けると 最後には光が見えるものです 聞く価値はある話ですよ なぜなら 今日お話しする 科学的知識によって 私はあらゆる事柄の考え方が 変わったのですから 感情を司る脳の 神経伝達組織の働きから 人との関わり方の動力学まで すべてです 司法制度もそうです まず 脳の話をしましょう

脳のこんな部位を聞いたことが ありませんか 「報酬中枢」というものです その部位を「報酬中枢」と呼ぶのは 顔を「鼻」と呼ぶようなものです 主な特徴の1つではありますが 他の部分を無視した呼び名なので 顔全体の働きを理解する上で 非常に混乱してしまいます 実際には絡み合いながらも 別個の3つのシステムから成っています 最初のシステムは「快感」です これは報酬に似ていて 感情を司る脳の オピオイドを分泌する部位です 快感の度合いを測定します 「この刺激は快いか? どれくらい快いか? この刺激は不快か? どのくらい不快か?」 新生児の舌に 砂糖水を垂らすと オピオイドを分泌する快感のシステムは すぐさま反応します

それから「欲求」システムです 広大なドーパミン作動性ネットワークが 伝達するもので 感情を司る脳の内外にあります これは私たちを刺激に引き寄せたり 遠ざけたりします 欲求はクッキーを もう1枚欲しいとついてくる よちよち歩きの子供のようです 快感と欲求は関連していますが 同一ではありません

3つ目のシステムは 「学習」です これはパブロフの犬のことです パブロフを覚えていますか? ベルの音で犬がよだれを 垂らすようにした人です 簡単なことで 犬に餌を与えると 自然によだれが出ます そこでベルを鳴らします 餌、よだれ、ベル 餌、ベル、よだれ ベル、よだれ では よだれが出たのは 犬がベルを食べたいからでしょうか? 犬はベルがうまそうだと 思ったのでしょうか? 違います パブロフはベルを 餌に「関連付けた」のです 欲求、快感、学習が 切り離されていることを理解すると これを説明する枠組みが 見えてきますが 研究者によって 「興奮の不一致」と呼ばれるものです

「不一致」というのは単純に よだれのような生理的反応と 主観的な快感や欲求の経験との間に 予想しうる関連性が ないことを意味します これは人間の持つ あらゆる感情や刺激のシステムに起こり セックスもそうです ここ30年間の研究によると セックスに関連付けられた 刺激に反応して 性器の血流が増加することが 分かっています このセックスに関連付けられた刺激が 主観的な快感や欲求の経験に 関連していないとしてもです 実際のところ 性器の反応と 主観的経験の間に 予想しうる関連性がある可能性は 10~50%なんです これは とっても幅が広い数字です ただ性器の血流を観察するだけでは セックスに関連付けられた刺激を その人がどう感じたかを 必ずしも予想できないのです これを夫に説明すると これぞと言える例を挙げてくれました 夫が言うには 「じゃあ 僕の高校時代の経験に 説明がつくなあ... 『ドーナツの穴』と聞いて 勃起したことがあるんだ」

(笑)

夫はドーナツに欲情したのか? 違います テストステロン満載の 10代の男の子は すべてを ほんの少し セックスに関連付けてしまうのです これはどちらもあり得るんです ある晩に ペニスがなかなか勃起せず 困ってしまうこともあれば 翌朝 起きると勃起していて 厄介でしかないこともあります

30代の女友達が電話で こう言ったことがあります 「パートナーと コトの最中に 『今すぐあなたが欲しい』と言ったら 彼ったら『まだ濡れてないよ 君は優しいね』と言ったの 私はその気満々だったのに どうしたのかな ホルモンかな? 医者に行くべき? どうしよう」 その答えは? 興奮の不一致です 望ましくない痛みを経験しているなら 医療関係者に相談してください そうでなければ 興奮の不一致です 性器の反応は 必ずしも 主観的な快感と欲求の経験を 予測しないというだけのことです 大学時代に別の友達が 性的な関係で初めて SMを試みた経験を話してくれました パートナーが彼女を こんな風に 腕を頭の上に縛って 彼女を立たせたまま クリトリスに棒が当たるように またがらせたそうです 私の友達は立って縛られたまま 男性はどこかに行きました SMですからね 放置プレイです 私の友達はこう思いました 「すごい退屈」

(笑)

男性が戻ってきたので 彼女は「飽きちゃった」と言いました 彼は彼女と 彼女のまたがった棒を見て 「でも 濡れてるよ?」 と言いました なぜ濡れていたのか? クリトリスを直接圧迫することは セックスに関連付いていますか? していますね 彼女がその経験に快感や欲求を 感じたかは分かりますか? 分かりません 彼女がその経験に快感や欲求を 感じたかを教えてくれるのは? 彼女自身です! 彼女は自分の欲求と快感を 認識し 言葉にしたのです 彼はただ彼女の言うことを 聞くだけでよかったのです 電話をしてきた友達への 解決策は何でしょう? パートナーに「話を聞いて」 と言えばいいのです ローションも買いましょう

(笑)

(拍手)

ローションに拍手を

(笑)

どこの誰でも必要ですからね でも「話を聞いて」という話の中でも 深刻なものをお話しします 講義で興奮の不一致を扱った後 ある学生がくれたメモに 書かれていたお話です 彼女には付き合って間もない パートナーがいて 色々試しており これ以上は進みたくない というところに達したので 「嫌だ」と言いました パートナーは「でも濡れてるよ 大丈夫 恥ずかしがらないで」と 恥ずかしい? まるで好きな人に「嫌だ」と伝えるのに 彼女がまったく勇気などー 振り絞らなかったかのようです 傷つけたくない相手に 「嫌だ」と言ったんですよ でも 彼女は繰り返しました 「嫌なの」と言ったのです 彼は聞いてくれたでしょうか?

#MeTooやタイムズ・アップの時代にあって 多くの人々に こう聞かれます 「どうしたら相手の快感や欲求が 分かるのだろう? 同意は言葉で交わさないと いけないのか?」 同意が曖昧な場合もありますし それについて大規模な 文化レベルでの対話を持たねばなりません でも この通説を排除したら 同意がいかに明白であるかについて 確認することはできませんか? これまでにお話しした どの例でも 一方が 快感や欲求を認識し 言葉にしています 「今すぐあなたが欲しい」 「嫌だ」 それを相手は間違っていると 決めつけたのです 相手の正気を疑い 深刻で相手を貶める行為です 「君は こう言うが 身体はそうではないと 示しているじゃないか」

こんなことが まかり通るのは 性にまつわる事柄だけです なぜなら 興奮の不一致は あらゆる感情や刺激のシステムに 起こることなんです 虫食いのあるリンゴをかじって 唾液が分泌されたら こう言おうと思いますか? 「君は嫌だと言うが 体は欲しがっているよ」なんて?

(笑)

この間違いをするのは パートナーだけではありません 米国司法教育プログラムの出版物に こういうものがあります 『判事が語る― 成人被害者の性的暴行事件において 審理の前に知っていたかったこと』 第13項はこうです 「時に 被害者は男女を問わず 身体的反応を経験することがあるが これは性的欲求や同意を意味する 反応であるとはいえない」 さらに暗い話題になっていきますが 最後には光が見えますので ついてきてください 複数回にわたる 同意のない性的接触を伴う― 最近の判例について話します 皆さんが陪審員席にいて 被害者はオーガズムに達した という情報を得たらどうでしょう 事件に対する直感的な反応は 変わりますか? 確認しておきますが オーガズムは生理反応です 不随意におこる緊張の緩和であり 性に関連付けられた刺激への 反応として起こります それでも 加害者の弁護士が陪審員に オーガズムのことを知らせたのは オーガズムが同意に代わるものだと 考えていたからです この事件は家庭内での児童性的虐待だった と付け加えておきます

深呼吸をしましょうか こうした話は 様々な感情を呼び起こします 怒りや恥や 混乱の末の性的興奮など なぜなら ぞっとするような話でも 性に関連付けられてはいるからです 他人ばかりの空間で そんな感情を抱えているのが なかなか困難な状況であっても 様々な感情の交錯から 抜け出すことができたならば その子供を思いやる一筋の光明へ続く道を 見いだすことができるはずです 本来は守って然るべき立場にいる 大人によって 身体との関係を傷つけられた その子供に そして 信頼に足る大人が存在し こう述べたことに救われるでしょう 「性器の反応は 性に関連する刺激を示すのみで 快感や欲求を示すものではなく 同意があったとは 到底認められない」と

(拍手)

この思いやりと希望こそが 私が世界中を回って 耳を傾ける人に このことを語り続ける理由です 私が話す まさにその瞬間にも 人々が救われるのが分かります 皆さんにも その言葉を 伝えてほしいのです 千人もの他人の前で 「クリトリス」と言う必要はありません でも 勇気を持って 一度 対話の機会を持ってください 性的暴行を経験した人に このことを話してください 周りに必ずいるはずです アメリカでは 女性の3人に1人 男性の6人に1人 トランスジェンダーの人の およそ半数が経験しています 「性器の反応は 性に関連付けられた刺激を示すのみで 快感や欲求とは無関係だ」 と言いましょう あなたの知っている判事や弁護士や 警官や性的暴行事件の陪審員を 務めるかもしれない人に伝えてください 「中には 快感や欲求を 感じない事柄には 体は反応しないと 思っている人がいるみたい そうであればいいけど 本当は 興奮の不一致だよ」と 周囲にいる混乱した10代の若者に 伝えてあげましょう 何が何だか答えを出そうと 精一杯のはずですから あなたがカビの生えた果物を食べて 唾液が分泌されたって 誰もこう言わないでしょう 「好きなのを認めたくないだけだろ」 なんてね これは下半身についても同じで 興奮の不一致です パートナーに伝えてください 私の快感や欲求を伝えるのは 私の性器じゃなくて 私自身なのだと

(拍手)

この通説は大変根深く 私たちの文化の非常に後ろ暗い力と 絡み合っています でも 勇気を出して 対話を持つたびに 混乱した10代の若者にとって 世界が ほんの少し生きやすく シンプルな場所になります 自分がおかしいのではと不安な 電話越しの友達を少し安心させられます 性的暴行事件の被害者にとって この世界を少し生きやすく 安全な場所にできます 女性の3人に1人 男性の6人に1人 トランスジェンダーの半数のために 私もまたそうです みなさんが勇気を出して 対話を持ってくださることに お礼を言います

(拍手)

ありがとうございました ありがとう

(拍手)

(ヘレン・ウォルターズ) エミリー こちらへ どうもありがとう いつものことでしょうが ステージ上で勇気を持って このお話をされたことに 感謝でいっぱいです 大変勇気の要ることですし お礼を言わせてください ありがとう

(エミリー・ナゴスキ) お話しできて光栄です

(ヘレン)普段のお仕事では トークの冒頭で話されていたように たくさん質問を受けると思います いつも聞かれる質問を 1つ挙げるなら何でしょう? カンファレンスの間中 千回も聞かれずに済むように ここで伝えておきたいことは?

(エミリー) 一番よく聞かれる質問は 他のほぼすべての質問の 根底にある質問です 「バイブレーター中毒になるか」や 「勃起不全をどうしたらいいか」など これらの根底にあるのは 「自分は普通だろうか」という問いです これに対する私の答えは 「そもそも普通とは何か どうして普通であろうとするのか」です どうして性については 普通でありたいのでしょう? 並外れていた方が いいと思いませんか? 普通のセックスがいいのか すごいセックスがいいのか? 思うに 性にまつわる事柄では 人と違いすぎることを 恐れる傾向があります 「これは普通なのか」と 人が聞いてくる時 実は 「自分は属しているか」と 聞いているのです この関係に属しているか? このコミュニティに属しているか? 性を持つ人間として この世に属しているか?と これらに対する答えは いつでも もちろん「イエス」です それを分かつ境界線― 限界はたった2つです 1つ目は 望ましくない セックスによる痛みがあるなら 医療従事者に相談すること 2つ目は 関係者全員が 自由な意志で参加していて いつでもやめることができるならば 何をしたって許されるのです 台本もなければ はまるべき型もなく 同意があり 望ましくない痛みがない限り 好きなことをして まったく構わないのです

(ヘレン)素晴らしいですね ありがとう

(エミリー)ありがとう

(ヘレン)本当に素晴らしいです

(拍手)